いま食の安全・安心を見直すときです。加工食品は品質的に劣ってきています。ー 八田純人 ー

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共働き世帯や1人暮らしの増加により、調理せずにそのまま食べられる惣菜(中食)市場規模は拡大の一途をたどっている。特に、子どもがいる世帯では、調理の時短や簡便化は食事の準備に手間をかけられない状況ではありがたい存在だ。

一方で、いま改めて食の安全・安心が問題になってきている。

そんななか、安心して身体に取り入れることのできる食材を選ぶ力が必要だと警鐘をならす専門家がいる。流通している食品の安全・安心について、一般社団法人 農民連食品分析センター 所長 八田純人さんに話を伺った

農民連食品分析センターは、不安といわれる輸入食品の安全性や、輸入・国産農作物の品質について調査分析をする施設を作ろうという農民と消費者の運動から、募金によって生まれました。

最近はTPP協定が話題になっていますが、1996年、日本はその前身とも言えるWTO国際協定に加盟しています。私たちが募金での設立を決意したきっかけはこのWTO国際協定でした。協定加盟にあたって、国内では、

「基準値が緩むのではないか」
「添加物の使用量が増えるのではない」

という議論が起こっていました。

安全で安心な食物を届けられなくなる危機感

日本の法律では、輸入品にかかる関税などは財務省の税関が、食品の安全性を水際で監視する仕事は、厚生労働省の検疫所が担当しています。もともと、私たちの施設の初代センター長は、前者にあたる税関の職員を勤めていました。

当時の日本の状況はすでに、WTO国際協定に加盟する前から、輸入食品はどんどん伸びていて、関税の窓口である税関もその対応に大変な状況であったようです。

当然、お隣の部署、食の安全性を監視する検疫所も同様の状況にあったはずですが、実務をになう監視員の数を増やす方向には進んではいませんでした。それを肌で感じてとっていた初代のセンター長は、あちらの現場はこれから大変なことになっていくはず、と思ったそうです。

そもそも、検疫所は輸入食品を水際でくい止める砦的役割を担っていました。しかし、このWTO国際協定以降、徐々に輸入手続きをスムーズに進めるための役割にウェイトがシフトしてきた部分があると言えます。

この変化が行き着く先は、ひょっとしたら国内で流通される作物や食品が、国民の健康にとって安全ではないものになってしまうかもしれないと、思ったそうです。

国産か輸入品かもわからないまま販売がされ、その安全性や品質を知らないまま消費者が購入する、その判断基準はただ単に値段が安いとか見た目がよいとかいうことだけで流通される可能性があることに、強い不安感がありました。

行政が力を抜き始めているこの分野で、実態を明らかにする活動が今後必須になるはずと、私たちは考えていました。

時を同じくして、輸入食品の急増に不安を感じていたのが農家さんたちでした。私たちの施設の頭には「農民連」という単語がありますが、これは私たちの施設の立ち上げの旗振り役となった農家さんらのグループです。

彼らは、だいぶ濃い性格の農家さんの集まりでして、当時、輸入食品が増加すれば自分たちの生活は脅かされる、ということはもちろん心配でしたが、それ以上に、輸入食品がどんどんと増えて、それを食べた消費者の健康が害されるなんてことが起きてしまったら、俺たち農家のプライドに関わると感じていたそうです。

農家にとって、国民に安全で安心なものを届けるのが仕事、それがおかしくなっちゃたまらないと。

でも、農家が海外の農家の生産物を、ただただネガティブにたたくのはフェアじゃない、とも考えていました。だいたいどこの国も、農家は振り回されています。

そうしたお互い食糧を作る使命を持った農家同士が、いがみ合っても仕方ないこと。だから、その解決には最も中立で、両者が考え、改善のためにアクションができる科学的データを集めてくれる分析施設がいるんじゃないか、と。

また、消費者の側でも、

「子どもに、よくわからないまま輸入食品を食べさせて大丈夫なのか」
「輸入食品が学校給食に入る可能性もあり危ないのではないか」

というような声が高まっている時期でもありました。

本当に輸入食品は食べても大丈夫なのか、消費者や農家の立場でそれを確かめ、知らせ、選ぶ基準になる情報を発信してくれる場所が必要だ、そうした分析者、生産者、消費者の3つの声が一つになり、私たちの施設は設立されました。

分析施設の設立はとてもお金がかかるもので、いま冷静に考えるとよくやったものだなと思いますが、当時は、農家さんだけでなく、おかあさんたちにも広く募金活動をお願いして、立ち上げ、現在に至っています。

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