人と人がケアしあうコミュニティ創り

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臨床心理士として活動しながら、発達障害や精神疾患や引きこもりなど、苦手分野がある人でも、その人ならではの味や良さを引き出せる環境の中で、すべての人が輝き、互いにケアしあうことができるコミュニティ作りを目指している南和行さんに患者中心の医療の必要性について伺いました。

自分を救ってくれた心理学

臨床心理士を志したきっかけ

現在は単科の精神科病院でカウンセリングや検査をしております。在籍している病院は、比較的小規模で小回りがきくこともあり、患者さんの声に対応しやすく、院長が積極的に患者さん中心を実践しています。

一方で精神科・心療内科でも3分診療というほどの診察時間で、症状に対して対処的に薬を出すだけで、患者さんが薬に依存してしまうという話を聞くことも少なくありませんでした。そういった所では臨床心理の役割も、ないか検査のみの所が多いようです。

臨床心理士に興味をもったきっかけは自分の体験からです。

今ではスクールカウンセラーが学校にも入っていますが、16~17年前はそのような人もいない状態でした。自分が高校受験の時に失敗し落ち込んでいるときに、心理学の教授が書いた本に出会い、出来ごとが変わらなくても、捉え方を変えることで気持ちが楽になるという、現在では認知行動療法と言われているものに出会いました。

その本を読んだことで気持ちが軽くなった経験から、もっと心理学の勉強をしたいと思い、大学で心理学を専攻しました。そのように、自分が困った体験から救ってくれたのが心理学だったのでカウンセラーになりたいと思いました。

日本の保険適応という壁

臨床心理士によるカウンセリング普及を阻む

精神科の医療のなかでいうと、臨床心理士はまだ国家資格になっていません。看護師や作業療法士は国家資格なので保険点数になりますが、臨床心理士は国家資格ではないため保険点数が貰えません。

臨床心理士によるカウンセリングが普及しない一番大きな問題です。普通に保険適応になっていると思われていることが多いのですが、意外と知られていないことです。

最近では臨床心理系、医療系の学会・協会が協力して国家資格にする準備はしていますが、まだ実際の形になっていません。

臨床心理士によるカウンセリングをしている病院では、症状の重い患者さんを臨床心理士が診るけれどもお金を貰わないところや、病院の経営のために患者さんの自費でとるところなど様々です。そのため、なかなか臨床心理士を雇いにくい現状です。

点数にならないことはお金にならないので、臨床心理士が病院に入れる数が少ないので、どうしても薬中心の治療になりがちなのです。

臨床心理士が患者のケアに関わる事で薬の量は減らせる

今いる病院は医師が臨床心理士の精神療法を積極的に治療の中に取り入れようと気持ちでやっていただいています。

元々あまりカウンセリングを受けず薬だけ飲んでいたという患者さんも何人も来られます。そのような患者さんの中には、5年間以上薬を飲んでいたけれども症状が変わらなかった患者さんにも多く出会いました。

そのような患者さんに、問題の本質は何かというところに向き合いながら話し、再発防止や再発予防を、ちゃんと話しができるようになると効果が表れます。「仕事もできませんでした」とか、「仕事をしてもすぐに辞めてしまう」ということを繰り返している患者さんも根本を診てそれを変えていくことで元気になっていく方が何人もいます。

パッチ・アダムスとの出会い

理想の患者中心の医療とは?

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患者中心の医療につい関心を持つきっかけになったのは、パッチアダムスという映画にもなった医師の影響です。アメリカの場合、保険に入れず十分な医療が受けられない人も多くいます。

ある意味、医療がビジネス化しているともいえます。パッチアダムスは、医療とはそうでなく、人をケアすることが大切で“家族が家族をケアする”“友達が友達をケアする”といったところが大切であると言っています。また、医師は決して偉い存在ではなく、患者さんとフラットな関係で接することを重視し、自ら行動に移して自分の病院を作るために活動し、自らの信念を伝えるために世界中で講演やワークショップをしています。

パッチアダムスが来日した際に講演を聞き改めて感動しました。

その後、アメリカの大学院に留学した時に彼のやっていることを見たいと思いネットで調べたところ、サマープログラムを見つけることができました。特に医療者に限らず、社会を変えたいとか、社会をよくしたいと思う人が集まる1カ月間のサマープログラムでした。そのサマープログラムに参加できる機会があったことが、自分の原点になっています。

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パッチアダムスの病院(ゲズントハイト・インスティテュート)は、まだ現在は病院としての機能はしていないのですが、以下のような理念を元にしています。

病院というよりはコミュニティに近く、医者もコメディカルも上下関係などなく、すべて同列に人が人をケアしあうコミュニティです。例えば患者さんが芸術とか音楽が好きだったら、その病院でコンサートをやったり、芸術のイベントを開いたりします。

上下関係の無いなかで患者さんをケアしていけば、患者さんもハッピーだし、医療者もバーンアウトにならずにすむと彼が言っていて、その部分にとても共感できました。自分の医療に対する思いなど、進むべき道が見えたと思いました。

拒絶への不安

患者さん同士のコミュニティの必要性

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家に一人、精神的に困っている状態の人がいると家全体の雰囲気がどのように接したらいいか分からない状態になると思います。精神的な病気の多くは一人だけで起こっているわけではなく関係性のなかで起こります。

そのような意味では家族が落ち着けること、家族が安心できるといることが、その人が治っていくうえで大事な要素になります。私の知人も家族会とかたちで活動されている方がいて、本人も鬱を経験されて、旦那さんも鬱を経験されて当事者の立場と家族の立場で家族会を定期的にやられています。

家族会のなかでは家族同士の関わりや、家族としての視点で講演会や勉強会をされています。それは一つ大事な要素だと思います。

情報や体験談をきくことで治療の決断する時の助けになります。医師の勧めるままに治療をするのではなく自分で選ぶことが大切です。選ぶうえでも選択肢がないと誤った民間療法の情報に騙されてしまう恐れもあります。

普段言えないことを言うことが大事

病気について普段隠しているということは、それを言うことで変な目で見られるとか、拒絶されるのではないかとかですから、鬱に限ったことでなく、例えば癌なども同じだと思います。

病気であることを、他人に言うことで相手からひかれたらどうしようとか、「気の毒ですね」と言われても自分が傷付くだけとか、そういうことで、ありのままの自分を出せない部分の苦しさを感じていると思います。

そういった方々の心の支えになり、少しでも感情が和らげられる存在に、myセカンドオピニオンがなれることを願っております。

南和行

早稲田大学第一文学部卒業後、ロータリー国際親善奨学生としてミシガン州立大学でカウンセリング心理学を学ぶ。修士課程在学中に、中学校と性虐待児支援センターでカウンセラーのトレーニングを受ける。卒業後、パッチアダムスの下で、社会デザインのための学びを深める。

2007年、帰国後、公立の教育相談所で、発達障害、不登校、親子の問題などの相談業務、小学校で児童、保護者、先生の相談・コンサルテーションを行う。また精神科の心理カウンセラーとして、児童から大人までのメンタルヘルスの向上のため、カウンセリングを行う。2008年から葛飾区の青少年を対象に、親子支援や学習支援のNPOの活動に関わっている。

その他にも、国際協力団体の顧問として、カンボジアの孤児院を支援する学生のサポートに関わっている。

現在は、大学病院に所属して、子どものメンタルヘルスの向上のため、効果的な児童精神医学の調査研究、医療従事者の研修に携わっている。

詳しくはブログ“あなたの輝きを取り戻し「あなたらしく幸せになる方法」参照下さい。